2012年3月26日月曜日

書評・痛快企業小説「人生に七味あり」 江上 剛 著  徳間書店


著者の江上剛氏は元銀行員だけに経済情報に強い。それゆえに著書の中にいろいろと経済知識を散りばめている。

これは読むほうにとっては勉強にもなり、ストーリーを楽しむのに加えて別なメリットがある。


例えば今回の作品「人生に七味あり」にも、次のような経済の話題について触れている。


(その1)

ウィスキーのサントリーオールドはピーク時の昭和55年には1240万ケース売れ、 1ケースは12本入りだから合計1億4880万本売れたことになる。

近年は、極端な落ち込みを見せていたウイスキーの売上だが、最近では人気タレントを使ってCMに力を入れたおかげもあって、若者を中心としたハイボールの需要が急激に増え、徐々に売上を回復している。


(その2)

飲食業ではFL経費比率いうのが大事である。
FL経費比率とはつまりF(food)とL(labor)であり、食材費と人件費の全体の経費に対する比率の
ことで、これが60%以内になることが経営的には望ましいとされている。


これらはほんの一部だが、こんなことが随所に書かれているのである。
どうですか皆さん、勉強になるとは思いませんか。


いっぽう肝心のストーリーのほうだが、こちらも山あり谷ありで、ハラハラドキドキ最後まで十分ひきつけられ、興味津々一気に読み通せた。


「ストリーの紹介」

主人公樫村徹夫(44)が営々と勤めてきた大手都市銀行は他行に吸収合併されてしまった。
同僚たちの退行が始まった。

送別会の帰途、なんとなくかかわってしまった辻占いの老女に「この先七味とうがらしが待つ」と妙なことを告げられた。

七味、つまり "うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ"が振りかかり、これから本当の人生が始まるというのである。

そして内村もついに飲食フランチャイズ会社のCFOに転身するのだが、隠蔽された百三十億円もの含み損が発覚、社は倒産の危機に…。

むりやりCEOを押し付けられた樫村と社員が七転八倒の果てに見たものとは?

そしてその後味わった「七味とうがらし」の本当の味とは?

この本は退職して再就職し、新天地で人生と仕事に苦闘する多くの人々に、とくにお薦めしたい勇気と希望の一冊である。


「著者紹介」
江上剛(エガミゴウ)1954年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、第一勧業(現みずほ)銀行入行。97年の第一勧銀総会屋事件では混乱収拾に尽力し、コンプライアンス体制構築に大きな役割を果たす。築地支店長在任中の02年、『非情銀行』で作家デビュー。翌年に退行後は、『亡国前夜』『隠蔽指令』『背徳経営』(以上、小社刊)『企業戦士』などヒット作を生み続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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