2012年10月10日水曜日

ニューヨークのホテル ・ 誰も知らないウラ話(その3)



一介のホテル従業員とも普通に接して、気楽に会話を交わす米国の大統領


アメリカの歴代大統領にジョンソンという人がいた。そのジョンソン大統領がある日私が働いていたスタットラーヒルトンへやってきた。


確かボクシングヘビー級のカシアス・クレイのタイトルマッチがマジソンスクエアーガーデンで行われたときであったと思う。


マジソンスクエアーガーデンといえば誰でも知っているニューヨークのプロスポーツの殿堂である。

なんとこの建物はわがスタットラーヒルトンの7番街を隔てたまん前にあるのである。


そのときジョンソン大統領はこの試合観戦にやってきていて、試合が始まる前のひと時の休息にと、すぐ前にあるこのホテルへとやって来たのだ。


さてその大統領だが、ホテルに到着してお付の人数名と一緒に玄関から入ってくるや否やまっすぐにフロント前までやってきた。

そしてフロントの中の従業員に向かって「ハロー」ときさくに声をかけるではないか。

すると迎える側のわがホテルのフロントオフィスチーフクラークのフレディは何も臆することなく大統領に返事を返し、にこやかな表情で挨拶を交わしているではないか。

その言葉にしても態度にしてもまったく普段どおりで、他の客に対するものと何ら変わったところがないのである。この光景を目の当たりにした私は少なからず驚いた。


私がいた大阪のホテルにも歴代の首相が訪れたことは何度もある。

しかしそうした場合に首相当人がフロントへ寄るようなことはなく、ほとんどの場合は秘書などのお付の人が客室使用の手続きにやってくるだけである。

したがって首相に直接声をかけるなどということは間違ってもない。日本の首相ともなれば普段はそれだけ庶民とは一線の距離を置いているのである。


ところがアメリカのジョンソン大統領はどうだろう。一般人と距離を置くどころか、お付の人などを介することなく、自分が直接フロントへ立ち寄っているのである。

そして一介の従業員と気楽に挨拶を交わしているのである。


まさに、ここに民主主義米国の原点を見たような気がした。人は皆平等ということを大統領が自ら示しているのである。

”日米の差ここにあり” という思いであった。

  (注)スタットラーヒルトンホテルは現ホテルペンシルベニア

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