2018年4月18日水曜日

だから振り込め詐欺はなくならない ・ 振り込め詐欺 正当化の論理とは?

4750万円詐欺、90歳女性ほぼ全財産失う

読売新聞電子版 20180417

 東京都品川区の女性(90)が先月、警察官や長男を装ったグループに、現金4750万円をだまし取られていたことがわかった
 女性は一人暮らしで、ほぼ全財産を失ったという。警視庁品川署は詐欺事件として捜査している。
 品川署幹部によると、女性は3月7日、警察官を名乗る男から電話で家族の名前を聞かれた。その直後に長男を名乗る男から「カバンをなくした」と金を無心する電話があった。女性が「金庫の鍵が壊れていて開かない」と言うと、修理業者の連絡先を教えられた。
 修理業者が金庫を直した後、長男の会社の関係者を名乗って自宅を訪れた男に4000万円を渡した。その後、「もっとお金がないか」と要求され、再度、別の男に750万円を渡したという。


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


詐欺師たちは振り込め詐欺を ≪今の社会にあってしかるべきもの≫正当化している


振り込め詐欺に対しては警察の取り締まりやコミュニティによる注意喚起活動が強化されているにもかかわらず、被害は一向になくなりません。

上の新聞記事のようについ最近の3月にも東京の90代の女性が振り込め詐欺に5000万円近くもの驚くべき大金ををだまし取られたことが報道されています。

でもいったいなぜ振り込め詐欺はなくならないのでしょうか。その理由の一つとして挙げられることに、詐欺師たちが「振り込め詐欺を正当化している」ことがあります。

つまり、犯罪性は認めながらも、今の社会にあるべきものとして、この行為を正当化しているのです。

正当化するとは「振り込め詐欺は今の社会にあってしかるべきもの」と、存在を肯定する考え方です。

振り込め詐欺がいつまでたってもなくならないのは、このような理論を携えた強力な組織を持つ詐欺集団によって営まれているからです。

なお振り込め詐欺は最近では特殊詐欺と呼ばれることが多くなっています。でも一般的には過去から長い間使われてきた降り込め詐欺という呼称の方ががイメージしやすく、実態を掴みやすいのではないでしょうか。

そうした観点から、この記事では一貫して振り込め詐欺を使うことにします。


詐欺師のリーダーは理論武装してプレイヤーを洗脳


振り込め詐欺がなくならないのは詐欺グループの組織が強固でしっかりしているからです。

しっかりした組織をつくるには優秀な人材が必要です。特に組織の末端で電話をかけるだけの、いわゆる「かけ子」と呼ばれるプレイヤーを育てるには強い指導力を持つ優秀なリーダーが必要です。

優秀なリーダーがいてこそモチベーションの高いプレイヤーが育つのです。

振り込め詐欺グループのリーダーの条件として第一に必要なのは、この仕事を正当化するための理論武装です。これなくしては部下を育てるどころか、仕事についてこさすことさえできません。

振り込め詐欺は反社会的なれっきとした犯罪です。この行為を「社会にあってしかるべきこと」として、その正当性を理論的にきっちり部下に説明でき、説得できてこそ完全に支配下に治めることができるのです。

プレイヤーたちを生まれ育った劣悪な環境による貧困が生み出した犯罪者とは言い切れません。中には親の愛を十分に受けた者もいれば、大学教育を受けた者さえいるのです。

このようなメンバーの教育指導が遂行できるのは、詐欺の世界の歴戦のつわものであることはもちろん、優れた頭脳の持ち主でなければなりません。

世間の嫌われ者になることを承知の上でこうした任務に就くのも、場合によっては数千万円にも及ぶ年収の魅力に誘われてのことなのです。

日の当たらない裏社会とはいえ、中にはこの世界にこんな人がと思われるほどの優秀な人材もいるのです。

こうしたリーダーの理路整然とまとめられた理論に基づいた説得により、プレイヤーたちは完璧に洗脳され、振り込め詐欺を正当な行為と思いこまされるのです。

かくして世間の批判や糾弾をものともしない、強力な詐欺グループが形成されるのです。


正当化によって末端のプレイヤーは老人を騙すことに罪の意識を持たなくなる


人は罪の意識にさいなまれるような犯罪性のあることには手を出さないのが普通です。

したがって当初はお金の魅力に負けて振り込め詐欺集団に入った者でも、結局は罪の意識に負けて脱退を考え始めます。

そうなると詐欺組織は早晩崩壊してしまいます。こうならないためにはメンバーに罪の意識を感じさせないことが必要になります。

そのために行われるのが正当化なのです。振り込め詐欺は実際には老人を騙してお金をとることが仕事です。

普通に考えればこれは悪事を働くことです。でもそう考えれば誰もこの仕事についてきません。

なんとしても罪の意識を持たせないことが大事になります。

そのために行われるのが正当化で、これによってプレイヤーを洗脳して罪の意識を取り去ってしまうのです。

欺す側の正当化の論理とは、「老人が所有する世の中の眠っている無益な資金を自分たちが活性化して有益なものに変えるやる」というものです。

これはひと昔前の豊田商事の海外先物取引詐欺の「世の中の眠っている資金をオレたちは活性化してやっている」という論理とまったく同じです。

このような正当化の考えがあるからこそ、プレイヤーはやめることなく、いつまでも悪の仕事の片棒を担ぐことができるのです。

振り込め詐欺がいつまでたってもなくならないのは、こうした正当化された理論に基づく高いモチベーションを維持した詐欺集団によって営まれているからです。


正当化がモチベーションの高い詐欺集団をつくる


振り込め詐欺の仕事を維持して絶え間なく成果を出すために必要なのは,なんといっても組織の高いモチベーションを維持することです。

振り込め詐欺がいつまでも続くのは、仕事が正当化されていることでメンバーのヤル気が育ちモチベーションが高まるからです。

それ故にいつまでも一定の成果を上げ続けることができるのです。

これこそがいつまでたっても振り込め詐欺がなくならない最大の要因なのです。




0 件のコメント: